半導体の材料となる「シリコンウエハ」で世界2位のシェアを持つ企業、SUMCOを分析します。
最近ではドル円の為替相場が120円以上と非常に円安で推移しており、輸出企業にとっては業績に好影響があると考えています。そんな中、足元の業績、今後の製品需要が良好で、株価も割高でない企業として注目しています。
ちなみにシリコンウエハの世界シェア1位は、同じく日本企業の信越化学工業です。この2社で世界シェアの6割を占めており、世界的にも影響力のある企業といえると思います。
また、半導体は「産業のコメ」と言われるほど、あらゆる産業に不可欠であり、昨今では、テレワークの推進や先端技術用途などによって需要が拡大、供給面ではコロナ影響や需要の急拡大に生産能力が追いつかないことなどを理由に半導体需要が逼迫しています。
<SUMCOの経営分析>
・売上と利益の推移
(マネックス証券の銘柄分析機能より)
売上と利益の過去10年の推移はこのようになっています。ここ10年は利益も安定していますが、2010年~2012年は経営悪化していたことがわかります。当時のIR資料(有価証券報告書)を確認すると、リーマンショックをきっかけに半導体需要が低迷し、それにより販売価格が下落したこと、その後半導体の生産調整や円高の市場環境に苦しんでいたことが分かりました。
現在では、固定費の削減活動による損益分岐点の引き下げや、価格・数量を固定した顧客との長期契約を主体として販売を行っているため、安定的な利益体質となりました。
・キャッシュフロー(CF)の推移
(マネックス証券の銘柄分析機能より)
キャッシュフローの推移は上記のようになっています。業績回復をした2014年以降は営業CF(赤の棒グラフ)が増加し、フリーキャッシュフローもプラスを維持しています。2021年期には、現預金残高(青の棒グラフ)がひときわ大きくなっています。その理由については後述します。
・貸借対照表(BS)の分析
(マネックス証券の銘柄分析機能より)
貸借対照表は上記のようになっています。資産側で割合が大きいのは、棚卸資産と有形固定資産です。棚卸資産は製品・原材料の在庫、有形固定資産は生産設備です。
有価証券報告書で詳細を確認すると、SUMCOに特徴的な項目があったので紹介します。
(SUMCO2020年12月期の有価証券報告書より)
①原材料及び貯蔵品
棚卸資産の内訳を確認すると、「製品」や「仕掛品」よりも「原材料及び貯蔵品」の金額が多いことが分かります。財務諸表の注記を確認すると、下記のような記載が見つかりました。
(SUMCO2020年12月期の有価証券報告書より)
シリコンウエハは、半導体材料として、毎年大きな需要変動を受けます。シリコンウエハの主原材料である多結晶シリコンが、過去仕入れ過ぎたことにより、在庫が積み上がっているようです。記載によると、在庫量は2016年をピークに減少しているとのことです。過度な在庫は資本効率を落としますし、維持管理費の増加、評価損のリスクを抱えてしまうことなど、あまり良いことではありません。今後この在庫が適切に使用されているかも注視する必要があります。
②長期前渡金
次に、「投資その他の資産」を確認すると、「長期前渡金」に335億円が計上されています。連結外部の企業に対して、これだけ多額の資金を預けていることはどういうことかというと、これも注記に記載がありました。
(SUMCO2020年12月期の有価証券報告書より)
こちらもシリコンウエハの原材料となる多結晶シリコンメーカーとの間の契約によるものということが分かります。契約の内容はわかりませんが、SUMCOにとってこれらは早期に解決をするべき/したい内容と思われます。また、業績が好調だった2018年には、長期契約を解消することにより特別損失100億円を計上していました。こういったリスクがあるという点には注意が必要です。
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP496796_Y8A121C1000000/
(日経新聞2018年11月28日の記事)